飲食店の使い方

その計算、必要ですか?

飲食店に限りませんが、売上から経費を引いたものが利益です。

それぞれに計算のもとに売価を設定して販売している。

この原価率に、やけに固執する人々がいるんですね。

今回は、そんな原価にまつわるお話となります。

原価率

ドリンクも料理も、必ずどこかしらで仕入れをして販売します。
その仕入れ値と使用量を掛け合わせ、販売価格が設定される。
その際、およその目安として使われるのが原価率。

厳密に何%に設定すれば正解とか、そういうものではないですね。
狙いや事情によって、高くも低くもなる数字で、絶対はなし。

乱暴な言い方をすれば、原価率の高い商品は得なメニューです。
店にとっては、利益にならない商品に該当しますからね。
なんで利益にならない商品を売る必要があるのか?

看板商品として育てたければ、採算度外視も十分にありえます。
それ単体で利益が出なくても、他のメニューで調整すればよい。

看板料理が売価500円・材料費400円・原価率80%だったとして、
サブ料理が売価300円・材料費 50円・原価率16%だったらどうでしょう?

ちょっと極端な例を示していますけど、成立するのはわかりますよね。
看板料理は肉や魚を用いた、わかりやすくて見栄えの良い商品。
サブは野菜を用いた小鉢などが想像しやすいでしょうか。

売りのメニューをショボい印象にするわけにはいきませんから、
そこにはお金をかけて魅力的なメニューを作っておく。
それでポジティブなイメージを与えつつ、他のメニューで利益を作る。
多くの飲食店は、概ね、こうしたメニュー設計でやりくりしています。

損をしたくないのはわかりますが

お客様の中には、この原価率をやたら知りたがる方がいます。
高原価率の商品を頼めれば、確かに損はしませんからね。
ただ、興味を持つのは別に構わないのですが、聞くのはNGです。

特にチェーン店などの場合は、企業秘密としている場合もあります。
しつこく尋ねられても、店側が暴露することはほとんどないですね。
そもそも、従業員に仕入れ値や原価率を教えない企業もあります。

個人店にしても、同業者相手ならまだしもと言えますが、
一般の普通のお客様相手に、原価率を答えたりはしません。
ただの迷惑にしかなりませんので、止めてあげてください。

飲食出身の人はともかくですが、お客様は基本、理解が足らないです。
馬鹿にしているわけではありませんよ。
相場観というものが、当然ですが業界外の人にはありませんので。

何がいくらか、などとこの場で書き連ねる気もありませんが、
正確な数字を知ったら、誰しもそれをぼったくりと考えるでしょう。
そのくらい、繊細な数字なんです。

時々、生ビールを普通のジョッキで200円などで販売している店があります。
利益を残せる価格設定ではないのですが、それを行っている。
つまり、別の商品で生を安売りする分の損失を補填できるからやるんです。

裏には緻密な計算で組み立てられた、その会社の戦略があるんですね。
お客様が同業他社の偵察ではない保証もありませんから。
あまり原価率を気にする行為は、そうした意味でも歓迎されません。

普通に楽しんだ方がいいですよ

お店側が、諸事情によって原価率を公表している場合があります。
主に居酒屋のおすすめメニューなど、店舗裁量で販売しているケースです。
これらは、単純に賞味期限の都合から早く売り捌きたい
業者さんとの付き合いで、大量に在庫を抱えなければならない
そういった時に起こりがち。

そうしたケースでは、お店側は利益減よりも廃棄ロスを嫌う傾向が強いので、
お客様のメリットをより強調するために、原価率を公表します。
安売りしても利益0円ではないですが、廃棄したら0円以下ですからね。
普段より販売価格を下げていることが多いので、本当にお得なんですよ。

お店側が公開している時は、十中八九、お客様側にメリットがある。
公開していない商品については、出来ない事情があるからやらないんです。

よりお得に、と考えること自体を否定はしません。
ただ、あれこれ考えて、探って、疑って。
それで、本当に楽しんで飲めていますか?

あれやこれやと考えず、好きなものを好きなように注文された方が、
確実に無駄のないひと時を過ごせると思うのですけどね。
原価を追求し、好きじゃない物を食べたり飲んだりして、楽しいですか?

あなたにとって、良い店が見つかることを願って。

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叶井 拓也

13年間、チェーン店を主に料理長・店長を歴任した元飲食人。 現職はwebライター。会社に雇われない生き方を模索しつつ、 ネットの片隅で活動中。

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